弁護士にしかできないこと
1. 職務上請求
弁護士・司法書士・行政書士など、いわゆる8士業は、受任した業務を遂行するために必要な場合、本人の同意を得ずに戸籍謄本や住民票の写しを請求できます。これを職務上請求といいます。専用の用紙を使用し、請求の理由を明記する必要があります。
探偵はこの8士業に含まれません。探偵に戸籍や住民票を請求する権限はありません。「うちなら戸籍が取れます」と説明する調査業者は、提携する士業による正規の請求を指しているか、そうでなければ不正な手段を想定している可能性があります。
2. 弁護士会照会(23条照会)
弁護士法23条の2にもとづく制度で、弁護士が受任している事件について、所属する弁護士会を通じて、公務所や公私の団体に必要な事項の報告を求めることができます。照会先には報告義務があるとされています。
照会の対象になりうるのは、たとえば次のような事項です。
- 市区町村に対する住民票・戸籍に関する事項
- 通信事業者に対する契約者に関する事項
- 金融機関に対する取引に関する事項
- 勤務先に対する在籍や給与に関する事項
ただし、実際に回答が得られるかは照会先の判断によるところが大きく、個人情報保護を理由に回答が拒まれることもあります。照会には弁護士会所定の手数料もかかります。万能の手段ではない、という点は押さえておいてください。
いずれも「事件」がなければ使えません
職務上請求も弁護士会照会も、受任している事件の遂行に必要であることが前提です。「昔の友人に会いたい」「初恋の人を探したい」といった理由では、弁護士は受任できず、これらの権限も使えません。弁護士に依頼できるのは、貸金の回収、遺産分割、離婚、損害賠償請求など、法的手続きの必要がある場面に限られます。
役割の違いを整理する
| 項目 | 弁護士 | 司法書士 | 探偵(調査会社) |
|---|---|---|---|
| 戸籍・住民票の職務上請求 | できる | できる | できない |
| 弁護士会照会 | できる | できない | できない |
| 現地での居住実態の確認 | 通常行わない | 通常行わない | できる(中心業務) |
| 周辺への聞き込み | 通常行わない | 通常行わない | できる |
| 尾行・張り込み | 行わない | 行わない | できる |
| 本人への意向確認 | 代理人として可能 | 限定的 | 第三者として可能 |
| 訴訟・交渉の代理 | できる | 簡裁の範囲で可能 | できない |
| 事件がなくても依頼できるか | できない | 登記等の業務が前提 | できる |
表を見ていただくと分かるとおり、両者は競合する関係ではなく、担当する区間が違います。弁護士は書類の上で住所を突き止めるところまで、探偵はそこから先の「書類上の住所に本当に住んでいるか」を確かめるところを担います。
弁護士に相談すべきケース
| 状況 | まず相談すべき相手 | 理由 |
|---|---|---|
| 貸したお金を回収したい | 弁護士 | 訴訟・差押えまで見据えるなら受任してもらうのが早い |
| 遺産分割を進めたい | 弁護士・司法書士 | 相続人の確定は戸籍収集の専門業務 |
| 相続登記をしたい | 司法書士 | 2024年4月から義務化。登記は司法書士の本業 |
| 失踪した配偶者と離婚したい | 弁護士 | 3年以上の生死不明は法定の離婚原因にあたる |
| 失踪宣告を申し立てたい | 弁護士・司法書士 | 家庭裁判所への申立て書類の作成を任せられる |
| 養育費を請求したい | 弁護士 | 調停・審判の代理が必要になる |
共通しているのは、探す先に法的手続きが控えているという点です。この場合、調査だけを先に進めても、結局は弁護士に依頼することになります。順序としては、弁護士に相談してから必要な調査の範囲を決めたほうが、費用の総額は下がります。
探偵に相談すべきケース
一方、次のような場合は調査会社の領域です。
- 住民票の住所に相手が住んでいない — 書類の上では追えません。現地での居住実態の確認が必要です
- 法的手続きの予定がない — 旧友や恩人に会いたい、親族の安否を知りたいといったケースでは、弁護士は受任できません
- 本人の意思を先に確かめたい — 代理人として接触すると身構えられる場面では、第三者としての意向確認が有効です
- 勤務先を特定したい — 債権回収では住所より重要になることがあります。書類には現れない情報です
- 相手の生活実態を確認したい — 同居者の有無、生活状況など、公的記録に載らない事実を確かめたい場合
実務では、両方を使うことが多くあります
債権回収を例にとると、弁護士が受任して職務上請求で住民登録地を取得し、その住所に居住実態がないことが判明した段階で調査会社が現地調査を行い、実際の生活拠点と勤務先を特定して、弁護士が差押えの手続きに進む、という流れです。当社でも、弁護士事務所からのご依頼を継続的にお受けしています。
費用の考え方
弁護士費用は、事件の種類と経済的利益の額によって決まります。人探しそのものに料金が設定されているわけではなく、受任する事件の費用の中に、必要な調査が含まれる形が一般的です。
- 法律相談料 — 30分5,000円程度が一般的。初回無料の事務所も多くあります
- 着手金 — 事件の内容と請求額により変動します
- 報酬金 — 得られた経済的利益に対する割合で決まることが一般的です
- 実費 — 戸籍・住民票の取得費用、弁護士会照会の手数料など
調査会社の費用は、所在調査で10万円〜100万円程度が相場です。詳細は人探しの費用相場にまとめています。両方を使う場合でも、それぞれの担当区間を明確にしておけば、重複した支出は避けられます。
どちらに相談すべきか迷ったら
判断の目安は単純です。「見つけた後に、法的な手続きをする予定があるか」。あるなら弁護士へ、ないなら調査会社へ。当社にご相談いただいた場合も、法的手続きが前提となるケースでは、まず士業への相談をおすすめしています。そのうえで、書類では追えない部分が残ったときにご依頼ください。
よくある誤解
「弁護士なら誰の住所でも調べられる」
調べられません。職務上請求は、受任した業務に必要な範囲でのみ認められています。理由のない請求は制度の目的外利用にあたり、弁護士自身が懲戒の対象になります。過去には、職務上請求用紙が不正に使われた事件も起きており、運用は厳格です。
「弁護士会照会を使えば携帯番号から住所が分かる」
必ずしも分かりません。照会先の判断により回答が得られないことがあります。照会には弁護士会の審査もあり、事件との関連性が認められなければ実施されません。
「探偵に頼むより弁護士のほうが安い」
目的によります。書類の取得だけで解決するケースなら弁護士や司法書士のほうが安く済みます。しかし、住民登録地に居住実態がないケースでは、書類をいくら取得しても解決しません。どこで行き詰まっているかによって、適切な相手も費用も変わります。
「探偵は弁護士の下請けにすぎない」
担当する領域が異なります。所在調査で求められるのは、断片的な情報から候補を絞り込む設計と、現地で事実を確認する作業です。これは法律の専門知識とは別の技能であり、だからこそ弁護士事務所からのご依頼が継続的にあります。
よくある質問
弁護士に人探しだけを依頼できますか。
できません。弁護士の職務上請求や弁護士会照会は、受任している事件の遂行に必要な場合に使える権限です。貸金の回収、遺産分割、離婚、損害賠償請求といった法的手続きが前提になります。会いたい、安否を知りたいといった目的だけでは受任されません。その場合は調査会社にご相談ください。
探偵は戸籍や住民票を取得できないのですか。
できません。戸籍や住民票を職務上請求できるのは、弁護士・司法書士・行政書士など8士業に限られており、探偵にその権限はありません。公的書類が必要なケースでは、請求権のある依頼者様ご自身に取得いただくか、提携する士業をご紹介したうえで、得られた情報を起点に現地調査を行います。取得できると説明する業者にはご注意ください。
弁護士会照会で携帯電話の契約者情報は分かりますか。
回答が得られる場合もありますが、確実ではありません。弁護士会照会には照会先の報告義務があるとされていますが、実際に回答するかは相手方の判断によるところが大きく、個人情報保護を理由に拒まれることもあります。また、事件との関連性が認められなければ弁護士会の審査を通りません。確実な手段として期待しすぎないほうがよいでしょう。
弁護士と探偵、どちらに先に相談すべきですか。
見つけた後に法的な手続きをする予定があるなら、まず弁護士です。訴訟や調停を見据えるのであれば、必要な調査の範囲も弁護士が判断できるため、結果的に費用の総額が下がります。逆に、法的手続きの予定がない場合や、住民登録地に居住実態がないことがすでに分かっている場合は、調査会社にご相談ください。
司法書士でも人探しを頼めますか。
相続登記や遺産分割に関連する範囲であれば依頼できます。司法書士も8士業として職務上請求ができるため、相続人を確定するための戸籍収集は日常的な業務です。ただし弁護士会照会は使えず、現地調査も行いません。相続登記が主目的であれば司法書士、紛争性がある場合は弁護士、書類で追えない部分は調査会社、という使い分けになります。
書類では追えないところから先を相談したい方へ
ご相談は無料です。24時間365日、匿名でも承ります。
お話をうかがったうえで、ご自身で試せることが残っていればその手順をお伝えします。