戸籍の附票とは何か
戸籍の附票は、本籍地の市区町村が戸籍と一緒に管理している書類で、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴が記録されています。住民票を異動するたびに、本籍地の附票へ自動的に新しい住所が追記される仕組みです。
この点が、所在調査において決定的に重要です。住民票は現在の住所しか示しませんが、附票を見れば「いつ、どこからどこへ移ったか」という移動の軌跡がわかります。何十年も前に音信不通になった相手でも、本籍地さえ判明していれば、そこから現住所まで一気にたどり着ける可能性があります。
| 書類 | わかること | 取得先 |
|---|---|---|
| 住民票 | 現在の住所、世帯構成、前住所(記載を希望した場合) | 住所地の市区町村 |
| 住民票の除票 | 転出・死亡等で消除された時点の住所と転出先 | 旧住所地の市区町村 |
| 戸籍の附票 | その戸籍が編製されて以降の住所の履歴 | 本籍地の市区町村 |
| 戸籍謄本 | 親族関係、婚姻・離婚・養子縁組等の身分事項 | 本籍地の市区町村 |
2019年の改正で保存期間が5年から150年に延長された
調査実務に大きな影響を与えたのが、2019年6月20日に施行された住民基本台帳法施行令の改正です。これにより、住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間が、従来の5年から150年に延長されました。
改正前は、除票になってから5年が経過すると自治体が廃棄していたため、長期間音信不通だったケースでは公的記録から足取りが完全に消えていました。改正後は事実上ほぼ永久に記録が残るため、追跡できる範囲は劇的に広がっています。
ただし改正前に廃棄されたものは戻らない
- 2019年6月20日の時点ですでに保存期間の5年を経過し、廃棄されていた記録は復元できません
- 具体的には、おおむね2014年6月より前に除票となった記録は、自治体によってはすでに存在しない可能性があります
- この場合、公的書類による追跡はその時点で途切れるため、聞き込みなど別のルートに切り替える必要があります
実務上は「2014年以降に動きがあったケースは公的書類で追える可能性が高い、それ以前に足取りが途絶えているケースは難易度が上がる」と理解しておくとよいでしょう。
誰が取得できるのか
ここが最大の関門です。戸籍の附票も住民票も、プライバシー保護の観点から取得できる人の範囲が厳格に制限されています。
1. 本人・同一世帯の者
本人、および住民票上同一世帯の方は、窓口で本人確認書類を提示すれば取得できます。
2. 直系血族・配偶者
戸籍の附票については、本人の配偶者、直系尊属(父母、祖父母)、直系卑属(子、孫)であれば、戸籍法にもとづき請求できます。この場合、請求者と対象者の関係を示す戸籍謄本等が必要です。
重要なのは、兄弟姉妹は直系血族ではないという点です。兄弟姉妹の附票を請求する場合は、次の第三者請求として扱われ、正当な理由の疎明が必要になります。
3. 第三者請求
上記以外の方は、自己の権利の行使または義務の履行のために必要である等の正当な理由を明らかにして請求します。具体的には、次のようなケースが認められうる例です。
- 貸金の返還を求めるため、債務者の現住所を確認する必要がある(契約書等の疎明資料が必要)
- 相続手続きのため、共同相続人の所在を確認する必要がある
- 訴訟提起のため、被告の住所を特定する必要がある
いずれも、請求書に理由を具体的に記載し、裏づけとなる資料の提出を求められます。「昔の友人に会いたい」「懐かしいので連絡を取りたい」といった理由では認められません。
探偵は戸籍や住民票を取得できるのか
はっきりお答えします。探偵業者に職務上請求の権限はありません。
職務上請求とは、業務上必要な範囲で戸籍謄本や住民票を請求できる制度で、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士のいわゆる8士業にのみ認められています。探偵はこれに含まれません。
「戸籍を取れます」という探偵には依頼しない
探偵が戸籍や住民票を取得できると説明する事業者がいれば、それは不正な手段を用いる意図があるか、制度を理解していないかのどちらかです。他人になりすまして戸籍を取得する行為は戸籍法違反であり、依頼者も無関係ではいられません。過去には、不正取得を業として行っていた調査業者と、職務上請求用紙を横流しした士業が摘発された事件が複数発生しています。
では探偵は何をするのか。当社の場合、公的書類が必要なケースでは提携する弁護士・司法書士をご紹介し、依頼者ご自身の権利にもとづいて適法に取得していただいた上で、その情報を起点に現地調査を行います。適法なルートを設計することも調査の一部です。
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実際の追跡手順
公的書類を使った所在調査は、次の順序で進みます。手元にある情報の量によって、どこから始めるかが変わります。
ステップ1:本籍地を特定する
附票を請求するには本籍地がわからなければなりません。手元に古い戸籍謄本があればそこに記載されています。ない場合は、自分の戸籍を起点にたどります。たとえば実の親を探す場合、自分の戸籍謄本から親の氏名と従前戸籍が判明し、そこから親の本籍地にたどり着けます。
ステップ2:附票で最新住所を確認する
本籍地の市区町村に附票を請求します。取得できれば、記載されている最後の住所が現在の住民登録地です。郵送請求も可能で、請求書・本人確認書類の写し・関係を示す戸籍・定額小為替(手数料)・返信用封筒を同封します。
ステップ3:転籍していた場合は追跡する
本籍地を移していた場合、附票は転籍後の戸籍にしか引き継がれません。この場合は戸籍謄本の記載から新しい本籍地を確認し、そちらへ請求し直します。転籍を繰り返しているケースでは、この作業を何度も繰り返すことになります。
ステップ4:現地で居住実態を確認する
住民登録地が判明しても、そこに実際に住んでいるとは限りません。住民票を移さずに転居している人は珍しくありません。最終的には現地に赴き、表札、電気メーター、郵便受けの状態などから居住実態を確認する必要があります。ここが民間調査の役割です。
実際にあったケース
35年前に生き別れた父親を探したいというご依頼で、依頼者の戸籍謄本から父親の従前本籍を特定し、依頼者ご自身が直系卑属として附票を請求。転籍が2回あったため3つの自治体に順次請求し、最終的な住民登録地を確認しました。ただし現地は既に別人の居住する借家で、周辺調査により3年前に施設へ入所していたことが判明。発見までに要した期間は約3週間でした。
公的書類で追えないときの選択肢
次のような場合、公的書類による追跡は行き詰まります。
- 住民票を移さずに転居している(実務上、これが最も多い)
- 支援措置により住民票の閲覧が制限されている(DV等の被害者保護)
- 2014年より前に除票となり、記録が廃棄されている
- そもそも請求できる関係にない
この場合は、旧住所地での聞き込み、勤務先の確認、共通の知人からの情報収集、SNS上の痕跡調査など、別のルートを組み合わせることになります。当社ではこうした複合的な調査を得意としています。
まとめ
戸籍の附票は所在調査における最も強力な手がかりであり、2019年の保存期間延長によってその有効性はさらに高まりました。まずは自分が請求できる立場にあるかを確認し、可能であればご自身で取得してみてください。
請求できる立場にない場合、あるいは住民登録地に実際には住んでいない場合は、そこから先が民間調査の領域です。どのルートが使えるかの見立てだけでも無料でお伝えできますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
戸籍の附票の取得に費用はいくらかかりますか。
自治体によって異なりますが、1通あたり300円程度が一般的です。郵送請求の場合は、これに定額小為替の発行手数料と返送用の切手代が加わります。
兄弟の戸籍の附票は取得できますか。
兄弟姉妹は直系血族ではないため、原則として第三者請求の扱いになり、正当な理由の疎明が必要です。ただし、同一の戸籍に在籍している場合(結婚等で分籍していない場合)は、同一戸籍の者として請求できます。
郵送でも請求できますか。
できます。請求書、本人確認書類の写し、関係を示す戸籍謄本等、手数料分の定額小為替、返信用封筒(切手貼付)を同封して、本籍地の市区町村役場宛に送付します。様式は各自治体のウェブサイトからダウンロードできるのが一般的です。
マイナンバーカードがあれば、コンビニで附票を取れますか。
本人および同一世帯の方については、コンビニ交付に対応している自治体であれば取得できます。ただし対応状況は自治体により異なり、除票や第三者請求は対応していません。
住民票に閲覧制限がかかっている場合はどうなりますか。
DV、ストーカー行為、児童虐待等の被害者を保護するための支援措置が講じられている場合、加害者とされる側からの請求は拒否されます。この措置は本人の安全に直結するものであり、迂回する方法はありません。事情がある場合は弁護士にご相談ください。