探偵業法とは
人探し調査で違法になる行為とならない行為の境界線

探偵業は2007年6月に施行された探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)によって規律されています。この法律は、事業者に届出や説明の義務を課すと同時に、調査の目的や手法にも制限を設けています。人探しを依頼する側にとっても、どこまでが適法なのかを知っておくことは重要です。

監修者 戸塚敦士
監修

戸塚敦士(代表取締役・人探し専門探偵)

株式会社オブザーバー / 東京都公安委員会 探偵業届出 第30070036号

1995年の創業以来、所在調査を専門に従事し、これまで3,000件以上の人探し調査を解決。TBS「1億分の8」でスゴ過ぎる探偵として選出、テレビ東京「もう一度うちの子に会いたい」出演。本記事は実際の調査実務にもとづいて執筆・監修しています。

探偵業法が定める事業者の義務

探偵業法は、それまで無規制だった探偵業に一定のルールを設けるために制定されました。主な義務は次のとおりです。

1. 公安委員会への届出(第4条)

営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県公安委員会へ届出を行い、探偵業届出証明書の交付を受けなければなりません。無届けでの営業は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。証明書は営業所の見やすい場所に掲示する義務があります。

2. 重要事項の説明(第8条)

契約の締結前に、書面を交付して重要事項を説明しなければなりません。口頭のみでは義務を果たしたことになりません。説明すべき事項には、事業者の名称と届出番号、調査の内容・期間・方法、費用の総額と支払時期、契約解除に関する事項などが含まれます。

3. 調査結果の使用に関する規制(第9条)

調査結果が犯罪行為、違法な差別的取扱い、その他の違法行為に用いられるおそれがあると認めるときは、依頼を受けてはならないと定められています。また、依頼者から違法な目的に使用しない旨の書面を取得することも義務づけられています。

4. 秘密の保持(第10条)

業務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。この義務は、従業者でなくなった後も継続します。

5. 名簿の備付け(第11条)

従業者名簿を営業所に備え、必要な事項を記載しなければなりません。

依頼者が確認できること

届出番号の掲示、重要事項説明書の交付。この二つが守られているかどうかで、法令を遵守する意識の有無はほぼ判別できます。契約前に必ず確認してください。

探偵にできないこと

探偵業法は、探偵に特別な調査権限を与える法律ではありません。探偵ができるのは、あくまで一般人と同じ権限の範囲内で、聞き込みや尾行・張り込みといった手法を用いることだけです。この点は強調しておく必要があります。

探偵にはできない・してはならないこと

  • 住民票や戸籍の職務上請求(弁護士・司法書士など8士業のみの権限です)
  • 他人になりすまして公的書類を取得すること(戸籍法・住民基本台帳法違反)
  • 携帯電話会社や金融機関から契約者情報を不正に入手すること
  • 住居や敷地内への無断立入り(住居侵入罪)
  • 郵便物の開封(信書開封罪)
  • 対象者の所有物への無断のGPS機器設置
  • 電話やメールの傍受・不正アクセス(不正アクセス禁止法違反)
  • 差別につながる身元調査(同和地区の該当性調査など、条例で禁止されている地域もあります)

「うちなら戸籍が取れます」「携帯番号から住所を割り出せます」と説明する事業者がいれば、それは違法な手段を想定しているか、実現できないことを言っているかのどちらかです。依頼者も無関係ではいられません。

適法な調査手法

では、探偵は何をしているのか。実際の調査は、次のような適法な手段の組み合わせで成り立っています。

手法内容適法性の根拠
聞き込み近隣、関係者への情報収集任意の会話であり制限はない
張り込み・尾行公道等の公共空間からの視認公共空間での観察は原則適法
公開情報の収集登記情報、官報、電話帳、SNSの公開投稿誰でもアクセスできる情報
名簿・資料の調査同窓会名簿、業界名簿等の合法的に入手した資料適法に流通する資料の利用
依頼者を通じた公的書類の取得依頼者自身が請求権を持つ書類を取得してもらう権利者本人による請求
士業との連携弁護士等に職務上請求を依頼する各士業の法定の権限

当社が実務で最も多く用いるのは、聞き込みと現地確認、そして依頼者ご自身に取得いただいた公的書類の分析です。地味に見えますが、これが最も確実です。

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尾行・張り込みはどこまで許されるか

尾行や張り込みそのものを直接禁止する法律はありません。公道など誰でもいる場所から人の行動を見ること自体は、原則として適法です。

ただし、次の場合は違法となり得ます。

  • 私有地や建物の敷地内に立ち入った場合(住居侵入罪、建造物侵入罪)
  • 望遠レンズ等で住居内を撮影した場合(プライバシー侵害、迷惑防止条例違反)
  • つきまといが継続し、相手に不安を与えた場合(ストーカー規制法、迷惑防止条例)
  • 調査対象者に発覚し、威圧的な態度を取った場合

つまり「どこから見ているか」「何を撮影しているか」「相手にどのような影響を与えているか」が判断の分かれ目になります。経験のある調査員ほど、この線引きに神経を使います。

依頼者側が問われる責任

見落とされがちですが、違法な調査を依頼した側も責任を問われる可能性があります。

共犯・教唆の問題

違法な手段による情報取得を明示的に依頼した場合、依頼者も共犯や教唆として責任を問われる余地があります。過去には、戸籍の不正取得を依頼した者が摘発された事例があります。

民事上の損害賠償

調査によって対象者のプライバシーが侵害された場合、依頼者が損害賠償請求を受ける可能性があります。「探偵に任せていたので知らなかった」という主張は、必ずしも通りません。

調査結果の使用にも制限がある

適法に取得した情報であっても、その使い方によっては違法となります。たとえば、判明した住所を第三者に無断で伝える、SNSで公開する、嫌がらせに用いるといった行為です。この点は「SNS拡散の危険性」で詳しく解説しています。

依頼者が守るべきこと

  • 調査の目的を正直に伝える(虚偽の目的で依頼しない)
  • 違法な手段を要求しない
  • 調査結果を目的外に使用しない
  • 取得した情報を第三者に無断で開示しない
  • 相手が接触を拒否した場合、その意思を尊重する

まとめ

探偵業法は、事業者を規律すると同時に、調査を依頼する方を守る法律でもあります。届出番号と重要事項説明書という二つの要件を確認するだけで、悪質な事業者に当たる確率は大きく下がります。

当社は東京都公安委員会 探偵業届出 第30070036号として、法令の範囲内で調査を行っています。適法な手段でどこまで到達できるか、その見通しを率直にお伝えするのも私たちの役割です。

よくある質問

探偵業の届出は、資格試験のようなものですか。

いいえ。届出制であり、資格試験は存在しません。欠格事由に該当しなければ届出は受理されます。したがって、届出があることは適法に営業していることを示すにすぎず、調査能力を保証するものではありません。実力は実績と説明の具体性で判断してください。

依頼内容を警察に知られることはありますか。

通常はありません。探偵業法第10条により、業務上知り得た秘密の保持が義務づけられています。ただし、依頼内容が犯罪に関わる場合はこの限りではありません。

調査対象者に、調査されていたことが伝わりますか。

適切に行われた調査であれば、対象者が気づくことはありません。ただし、第三者を介した接触を行う場合は、依頼者がいることを前提に相手へ意向を確認します。この場合、依頼者のお名前を伝えるかどうかはご希望に応じて調整します。

契約書に「調査結果を違法な目的に使用しない」という書面がありますが、これは何ですか。

探偵業法第9条第2項にもとづく書面です。事業者は依頼者から、調査結果を違法行為に使用しない旨の書面を取得する義務があります。法令上必要な手続きですので、求められた場合はご記入をお願いします。

違法な調査をされた場合、どこに相談すればよいですか。

営業所を管轄する都道府県公安委員会(実務上は警察本部の生活安全部門)が探偵業の監督官庁です。また、契約に関するトラブルは消費生活センターでも相談を受け付けています。