興信所と探偵事務所は法律上同じ
2007年6月に施行された探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)は、その規制対象を次のように定めています。
探偵業法が定める「探偵業務」
他人の依頼を受けて、特定人の所在または行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として、面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務。
この定義に「探偵事務所」「興信所」といった名称は一切登場しません。実地の調査を行って依頼者に報告する事業であれば、何を名乗っていても同法の規制対象になります。したがって、興信所を名乗る事業者も探偵事務所を名乗る事業者も、次の義務をまったく同じように負っています。
| 項目 | 探偵事務所 | 興信所 |
|---|---|---|
| 適用される法律 | 探偵業法(同一) | |
| 公安委員会への届出 | 営業所ごとに必須(同一) | |
| 重要事項説明書の交付 | 契約前に書面で義務(同一) | |
| 契約書面の交付 | 義務(同一) | |
| 守秘義務・目的外利用の禁止 | 義務(同一) | |
| 従業者への教育義務 | 義務(同一) | |
| 人探しの料金相場 | 10万〜100万円程度(名称による差はない) | |
つまり「興信所のほうが格式が高い」「探偵のほうが個人調査に強い」といった判断には、法的にも実務的にも根拠がありません。
呼び名が分かれた歴史的経緯
では、なぜ2つの呼び名が併存しているのか。これは出自の違いによるものです。
興信所は企業の信用調査から始まった
興信所は明治期に、企業間取引における与信判断を目的とした信用調査機関として登場しました。取引先の資産状況や経営実態を調べる、採用予定者の経歴を照会するといった、法人向けの業務が中心でした。「興信」という語自体が、信用を調べ起こすという意味を持ちます。
探偵事務所は個人向けの調査業として発展した
一方の探偵事務所は、個人からの依頼を受ける調査業として発展してきました。家庭内の問題、行方不明者の捜索、素行の確認といった個人の事情に対応する業態です。
この色分けは戦後もしばらく残っていましたが、業務内容が相互に重なるにつれて実質的な差は失われていきました。そして2007年の探偵業法施行によって、法律上も完全に同一の扱いとなりました。現在残っているのは、屋号の選び方の違いだけです。
業務範囲は名称では判断できない
実務の現場を見ると、事業者ごとの得意分野は名称とまったく相関していません。
- 興信所を名乗りながら、個人の浮気調査を主力にしている事業者
- 探偵事務所を名乗りながら、企業の与信調査や採用調査を扱う事業者
- どちらの名称でも、所在調査(人探し)をほとんど扱っていない事業者
いずれも珍しくありません。したがって依頼先を検討する際は、名称ではなく、その事業者が実際に何を年間どれくらい扱っているかを確認することが唯一意味のある方法です。
人探しの料金相場
興信所・探偵事務所を問わず、人探し(所在調査)の費用相場は10万円〜100万円程度です。幅が大きいのは、難易度が案件ごとに大きく異なるためです。
| 手元の情報 | 費用の目安 | 想定される調査 |
|---|---|---|
| 氏名・生年月日・過去の住所がそろっている | 20万〜40万円 | 公的記録の追跡と現地での居住実態確認が中心 |
| 氏名・生年月日はあるが住所が古い | 30万〜60万円 | 旧居住地からの追跡、周辺への聞き込みが加わる |
| 氏名と断片的な情報のみ | 40万〜80万円 | 候補者の絞り込みから始まり、確認作業が長期化する |
| ありふれた氏名のみ | 着手困難な場合がある | 絞り込みの手段がなく、お断りすることがあります |
料金体系は3種類
- 着手金型 — 調査開始時に定額を支払う。結果にかかわらず費用が確定するため、総額が読みやすい
- 成功報酬型 — 着手金を抑え、発見時に報酬が発生する。着手金10万〜30万円+成功報酬20万〜60万円程度という設定が多い
- 時間制 — 調査員の稼働時間に応じて課金する。短期で終わる見込みの案件に向く
所在調査は浮気調査とは別の技能
依頼先を選ぶうえで、最も見落とされやすい点をお伝えします。探偵業への依頼で件数が最も多いのは浮気・素行調査であり、多くの事業者はこの分野を前提に体制を組んでいます。ところが人探しは、必要な技能が根本的に異なります。
| 浮気・素行調査 | 人探し(所在調査) | |
|---|---|---|
| 開始時点 | 対象者の所在がわかっている | 対象者がどこにいるかわからない |
| 中心となる作業 | 尾行・張り込み・撮影 | 断片情報の分析、居住可能性地域の推定、候補の絞り込みと確認 |
| 必要な能力 | 撮影技術、気づかれない追尾 | 公的記録の知識、人間関係のたどり方、地道な現地確認 |
| 調査期間 | 数日〜数週間 | 1週間〜数か月 |
| 成果物 | 行動を記録した報告書と写真 | 所在の特定と、居住実態の裏付け |
浮気調査を主力にしている事業者が人探しを受けた場合、住民登録地までは判明しても、そこに実際には住んでいないという段階で止まってしまうことがあります。ここから先に進めるかどうかが、所在調査の経験量で分かれます。
依頼先を検討する際は、「人探しを年間どれくらい扱っていますか」と直接尋ねてみてください。当社は創業以来、所在調査を専門としており、これまで3,000件以上を解決してきました。
依頼先を選ぶ5つの確認項目
名称にかかわらず、次の5点を確認すれば、避けるべき事業者はほぼ判別できます。
- 探偵業届出証明書の番号が明示されているか — ウェブサイトや広告に届出番号の記載があるか。届出は営業所ごとに必要です
- 重要事項説明書が契約前に書面で交付されるか — 探偵業法上の義務です。口頭のみで進めようとする事業者は避けてください
- 見積書に何が含まれているか — 交通費・宿泊費・車両費といった実費が込みなのか別途なのか。追加料金が発生する条件は何か
- 違法な手法を提案していないか — 「戸籍を取得します」「電話番号から住所を割り出します」といった説明をする事業者は、法律上できないことを述べています
- 難しいケースを難しいと言えるか — 「必ず見つかります」「成功率100%」と断言する事業者には注意してください。所在調査に確実はありません
それぞれの詳細は失敗しない探偵の選び方で解説しています。また、調査で違法になる行為とならない行為の境界線は探偵業法とはにまとめました。
弁護士・司法書士・警察に頼むべきケース
調査業者に依頼する前に、別の窓口のほうが早く、費用も抑えられる場合があります。
| 状況 | まず相談すべき先 | 理由 |
|---|---|---|
| 事件性がある/生命の危険がある | 警察(110番・最寄りの警察署) | 特異行方不明者として積極的な発見活動が行われます |
| 認知症の高齢者・未成年が行方不明 | 警察(ためらわず110番) | 時間の経過が生命に直結します |
| 相続手続きで相続人の所在を確認したい | 弁護士・司法書士 | 職務上請求により戸籍・附票を取得できます |
| 貸金の回収が目的 | 弁護士 | 訴訟提起の見込みがあれば受任により手続が進みます |
| 住民登録地に実際には住んでいない | 探偵・興信所 | 実地調査でしか居住実態は確認できません |
相続や債権回収のケースでも、書類上の住所に相手が実際にいなければ、そこから先は実地調査の領域になります。詳しくは音信不通の相続人を探す方法、逃げた債務者を探す方法、行方不明者届の出し方をご覧ください。
よくある質問
興信所と探偵事務所、どちらに人探しを頼むべきですか。
名称で選ぶ意味はありません。2007年施行の探偵業法により、どちらも同じ法律の規制を受ける同一の事業として扱われています。届出義務、重要事項説明書の書面交付義務、守秘義務もすべて同じです。見るべきなのは名称ではなく、探偵業届出証明書の番号が明示されているか、所在調査(人探し)の実績があるか、見積書と契約書が書面で交付されるかの3点です。
興信所の人探しの料金相場はいくらですか。
興信所・探偵事務所を問わず、人探し(所在調査)の相場は10万円〜100万円程度です。金額を決める最大の要因は手元の情報量で、氏名・生年月日・過去の住所がそろっていれば20万〜40万円程度、氏名と断片的な情報のみでは40万〜80万円程度になることがあります。名称による料金差はありません。
興信所は個人の依頼も受けてくれますか。
受けています。興信所はもともと企業の信用調査機関として始まりましたが、現在は個人からの依頼も一般的に扱っています。逆に探偵事務所が法人調査を扱うこともあります。出自による色分けは実務上ほとんど残っていないため、その事業者が実際に何を得意としているかを個別に確認してください。
届出をしていない業者かどうかは、どう確認すればよいですか。
探偵業を営むには、営業所ごとに都道府県公安委員会への届出が必要で、届出をした事業者には探偵業届出証明書が交付されます。ウェブサイトや広告に届出番号が記載されているか、営業所に証明書が掲示されているかを確認してください。番号を明示していない事業者への依頼は避けるべきです。当社は東京都公安委員会 探偵業届出 第30070036号として届出をしています。
見積もり以外に追加料金が発生することはありますか。
契約内容によります。交通費・宿泊費・車両費といった実費が別途になっている場合、遠方の調査では見積額を大きく超えることがあります。契約前に、実費が料金に含まれるのか別途なのか、どういう条件で追加料金が発生するのかを、重要事項説明書と見積書の両方で確認してください。この確認を書面で行わないまま着手することが、料金トラブルの最も多い原因です。