なぜ住所の特定が必要なのか
法的手続きを進めるには、相手の住所が不可欠です。理由は次のとおりです。
- 訴訟を提起するには、訴状に被告の住所を記載しなければなりません
- 訴状は被告の住所に送達される必要があり、送達できなければ手続きが進みません
- 支払督促も同様に、相手方の住所への送達が前提です
- 勝訴判決を得ても、差し押さえる財産(給与・預金・不動産)の所在がわからなければ回収できません
つまり所在調査は、回収手続き全体の入口にあたります。ここでつまずくと、何も始まりません。
先に確認すべき「時効」
- 2020年4月1日以降に生じた債権は、権利を行使できることを知った時から5年で時効消滅します
- 2020年3月31日以前の個人間の貸金は、原則として10年です
- 内容証明郵便による催告で6か月間、時効の完成を猶予できます
- 訴訟の提起や差押えを行えば、時効は更新されます(振り出しに戻ります)
- 時効期間が迫っている場合は、調査と並行して弁護士へご相談ください
調査の手順
ステップ1:手元の資料を整理する
調査の起点になるのは、契約時に取得した情報です。次のものを探してください。
- 借用書、金銭消費貸借契約書(住所・氏名・生年月日が記載されているはずです)
- 運転免許証やマイナンバーカードの写し
- 振込先の口座情報(金融機関名と支店名から生活圏が推測できます)
- 勤務先の情報、名刺
- 保証人の連絡先
- やり取りの記録(メール、SNS、通話履歴)
特に借用書に記載された住所と生年月日は決定的です。これがあれば、次のステップに進めます。
ステップ2:住民票・戸籍の附票を第三者請求する
債権者は、債権回収という正当な理由にもとづき、債務者の住民票や戸籍の附票を第三者請求できる場合があります。請求先は旧住所地の市区町村(住民票の除票)または本籍地(附票)です。
請求時には、次の資料を添えて理由を疎明します。
| 必要なもの | 内容 |
|---|---|
| 請求書 | 自治体所定の様式。請求理由を具体的に記載します |
| 疎明資料 | 借用書、契約書、判決書など、債権の存在を示すもの |
| 本人確認書類 | 請求者本人のもの |
| 手数料 | 1通300円程度。郵送の場合は定額小為替 |
自治体の判断により認められない場合もあります。その場合は弁護士に依頼し、職務上請求によって取得する方法が確実です。
ステップ3:居住実態を確認する
住民登録地が判明しても、そこに住んでいるとは限りません。債務から逃れている相手ほど、住民票を移さずに転居している傾向があります。
現地では次の点を確認します。
- 表札の有無と記載されている氏名
- 郵便受けの状態(郵便物が溜まっていないか、宛名は誰か)
- 電気・ガスのメーターが動いているか
- カーテンや洗濯物など、生活の痕跡があるか
- 建物の所有者(登記情報から確認できます)
- 近隣からの情報(いつごろから住んでいるか、いつ引っ越したか)
この現地確認と周辺調査が、民間調査の中核です。書類上の住所と実際の居住地がずれているケースこそ、調査機関の出番になります。
勤務先の特定が回収の鍵になる
回収を考えるなら、住所以上に重要なのが勤務先です。判決を得た後の強制執行において、給与の差押えは最も実効性が高い手段だからです。
給与債権は、原則として手取りの4分の1まで差し押さえることができます(養育費等の場合は2分の1)。一度差押えが認められれば、完済まで継続的に回収できるため、預金の差押えより確実です。
第三者からの情報取得手続き
2020年4月施行の改正民事執行法により、判決等の債務名義を持つ債権者は、裁判所を通じて市町村や年金機構から債務者の勤務先情報を取得できるようになりました。ただし、この手続きにも債務者の住所が必要です。まず所在を特定することが前提になります。
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調査で得た情報の使い方
探偵業法第9条は、調査結果が違法行為に用いられるおそれがある場合、依頼を受けてはならないと定めています。回収のための所在調査は正当な目的ですが、その後の行動には注意が必要です。
回収行為として違法になり得るもの
深夜や早朝に自宅を訪問する、勤務先に押しかける、大声で借金の事実を告げる、貼り紙をする、家族に返済を強要する。これらは、状況によっては脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、住居侵入罪等に問われる可能性があります。個人間の貸借であっても、行きすぎた取立ては違法です。
所在が判明したら、まずは内容証明郵便で支払いを求め、応じなければ法的手続きに移るのが正しい順序です。当社では、調査報告書を訴訟資料としてお使いいただける形式でお渡ししています。
弁護士と調査機関の使い分け
| 対応する内容 | 弁護士・司法書士 | 調査機関(探偵) |
|---|---|---|
| 住民票・戸籍の職務上請求 | 可能 | 権限なし |
| 住民登録地での居住実態の確認 | 通常は行わない | 対応可能 |
| 転居先の周辺調査・聞き込み | 通常は行わない | 対応可能 |
| 勤務先の割り出し | 限定的 | 対応可能 |
| 内容証明の作成・訴訟の代理 | 可能 | 権限なし |
| 強制執行の申立て | 可能 | 権限なし |
見てのとおり、両者の役割は重なりません。実務上は、まず調査機関が所在と勤務先を特定し、その情報をもとに弁護士が法的手続きを進めるという流れが最も効率的です。当社では提携する弁護士のご紹介も可能です。
まとめ
債務者の所在調査は、回収手続きの出発点です。時効が迫っている場合は特に、早期の着手が重要になります。まずは手元の資料を整理し、住民票の第三者請求を試みてください。
住民登録地に居住実態がない、あるいは請求が認められないという段階に至ったら、そこからが当社の領域です。回収の見通しを含めてご相談に応じます。
よくある質問
借用書がなくても調査できますか。
調査自体は可能ですが、住民票の第三者請求では債権の存在を疎明する資料が求められます。振込記録、督促のやり取り、借用を認めるメッセージなども疎明資料になり得ますので、まずはお手元の記録を整理してください。
調査費用は債務者に請求できますか。
訴訟において、調査費用が損害として認められるかは事案によります。一般に、不法行為に基づく損害賠償請求では認められる余地がありますが、単純な貸金返還請求では認められにくい傾向です。弁護士にご確認ください。
少額の貸金でも調査を依頼する意味はありますか。
回収見込み額と調査費用のバランスを考える必要があります。当社では、ご相談の段階で回収の見通しと概算費用をお伝えし、費用倒れになりそうな場合はその旨を率直に申し上げています。
相手が自己破産していたらどうなりますか。
免責が確定していれば、原則として支払義務は消滅します。調査の前に、破産手続きの有無を確認することをおすすめします。官報での公告を検索する方法があります。
会社が相手の場合も調査できますか。
できます。法人の場合は登記情報から本店所在地や代表者を確認できるため、個人より追跡しやすいのが通常です。ただし本店所在地が実体のないケースもあり、実際の営業所の特定が必要になることがあります。