まず110番。ためらう必要はありません
認知症の方が行方不明になった場合、迷わず110番通報してください。「まだ数時間だから」「そのうち帰るかもしれない」という判断は禁物です。
理由は明確です。認知症による行方不明は、行方不明者発見活動に関する規則にいう特異行方不明者、すなわち「病気、高齢その他の事情により、その生命または身体に危険が生じるおそれがある者」に該当します。この区分になれば警察は積極的な発見活動を行います。一般家出人とはまったく扱いが異なります。
時間との勝負である理由
- 本人に危険を回避する判断力が期待できず、交通事故や転落のリスクが高い
- 夏は熱中症、冬は低体温症により、屋外での滞留が直接生命にかかわる
- 水分補給や服薬ができず、持病が急速に悪化する
- 自力で帰宅する、助けを求めるといった行動が期待できない
実際、行方不明となった当日に発見される割合が最も高く、日数が経過するほど無事に発見される可能性は低下していきます。最初の数時間の動き方が結果を大きく左右します。
最初の1時間でやること
- 110番通報する— 認知症の診断があること、持病と服薬状況、いなくなった時刻と服装を伝えます
- 家の中と敷地内をもう一度確認する— 押入れ、浴室、物置、車の中など。屋内で見つかるケースは実際にあります
- 本人が持ち出したものを確認する— 財布、鍵、靴、携帯電話、傘。何を持って出たかで行動範囲が推測できます
- 写真を用意する— 最近撮影した、顔がはっきり写ったもの。スマートフォンにあるものですぐに構いません
- 家族で役割を分ける— 自宅で待機する人、近隣を探す人、連絡窓口になる人を決めます
自宅で待つ人を必ず残す
本人が自力で帰宅したときに誰もいないと、再び外出してしまうことがあります。また警察や近隣からの連絡を受ける窓口も必要です。全員で探しに出ないでください。
捜索範囲の考え方
認知症の方の移動には一定の傾向があります。やみくもに探すより、次の考え方で優先順位をつけたほうが効率的です。
移動距離の目安
多くは徒歩での移動です。歩行能力にもよりますが、数時間経過している場合、数キロメートル圏内を想定するのが基本です。ただし、公共交通機関を使えるだけの能力が残っている方の場合、電車で数十キロ以上離れた場所で発見されることもあります。定期券やICカードを持ち出していないかを必ず確認してください。
行き先の傾向
- 昔住んでいた家— 最も多いパターンです。何十年も前の住所に向かおうとします
- かつての勤務先— 「仕事に行く」という意識で出ていくケース
- 実家や生家— 遠方であっても向かおうとすることがあります
- 日課の経路— 散歩コース、通っていた店、通院先など
- 一方向に進み続ける— 曲がることなく直進し、道なりに遠くまで行ってしまう傾向があります
警察に届け出る際、こうした心当たりの場所を具体的に伝えてください。捜索の優先順位が変わります。
自治体のSOSネットワークを活用する
多くの市区町村は、認知症高齢者等の行方不明に対応するための見守りネットワーク(SOSネットワーク、見守りメール等、名称は自治体により異なります)を運用しています。
これは、行方不明の情報を警察、消防、タクシー会社、バス事業者、コンビニ、金融機関、郵便局などの協力機関に一斉配信し、目撃情報を集める仕組みです。地域によっては防災無線での放送や、住民向けメール配信も行われます。
| 連絡先 | 依頼できること |
|---|---|
| 市区町村の高齢福祉課 | SOSネットワークの発動、防災無線での放送依頼 |
| 地域包括支援センター | 地域の見守り体制への情報共有、事後の支援相談 |
| 担当のケアマネジャー | サービス事業所への情報共有、本人の行動傾向の把握 |
| 近隣の交番 | 警ら時の重点確認、地域の情報収集 |
警察への届出とは別に、これらへの連絡も並行して行ってください。特にケアマネジャーは本人の生活パターンを把握しているため、有力な情報源になります。
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発見が長期化した場合
数日が経過しても発見に至らない場合、捜索の範囲を広げる必要があります。次のような調査が有効です。
1. 広域での照会
身元不明の状態で保護されている方が、遠方の警察署や病院、福祉施設にいるケースがあります。警察には身元不明者の情報が集約されているため、届出を受理した警察署を通じて広域での照会を依頼してください。
2. 防犯カメラの解析
自宅周辺、駅、商店街などの防犯カメラは、移動方向を特定する上で決定的な手がかりになります。ただし記録の保存期間は1週間から1か月程度が一般的で、時間が経つほど失われていきます。警察に依頼するのが基本ですが、民間の事業者に対しては当社のような調査機関が交渉して確認させていただくこともあります。
3. 民間調査の併用
警察は特異行方不明者として動きますが、人員には限りがあり、他の事案と並行して対応しています。ご家族が「もっと広く、もっと集中的に探してほしい」と感じる場合、民間の調査を併用するという選択があります。当社では、警察の捜索と並行して、聞き込みや防犯カメラの確認を集中的に行う体制を取ることができます。
再発を防ぐための備え
一度行方不明になった方は、再発する可能性が高いといわれています。発見後、落ち着いたら次の備えを検討してください。
GPS端末・見守りサービス
靴に装着するタイプ、キーホルダー型、衣類に縫い付けるタイプなど、さまざまな見守りGPSが市販されています。多くの自治体では購入費用の助成制度があるため、高齢福祉課に確認してください。
重要なのは「本人が持ち出しやすいものに付ける」ことです。財布や携帯電話は置いて出てしまうことがありますが、靴は必ず履きます。靴に装着するタイプが実用的です。
身元を示すものを身につけてもらう
- 衣類や持ち物への名前・連絡先の記入(アイロンプリント、名前入りワッペン等)
- 自治体が配布している見守りシール(QRコードで連絡先がわかるもの)
- 靴の中敷きへの連絡先の記載
事前登録制度
多くの自治体では、認知症の方の情報(写真、身体的特徴、緊急連絡先)を事前に登録しておく制度があります。登録しておけば、実際に行方不明になった際、写真を用意する時間を省いて即座に情報を配信できます。まだの方は今のうちに手続きしておいてください。
最新の写真を用意しておく
意外と見落とされがちですが、いざというときに使える最近の顔写真がないご家庭は多くあります。半年に一度は正面から撮影し、すぐに取り出せる場所に保管しておいてください。
まとめ
認知症による行方不明は、時間が生命に直結します。ためらわず110番し、同時に自治体のネットワークを動かしてください。届出をためらったことを後悔されるご家族を、私たちは何度も見てきました。
当社では、警察の捜索と並行した集中的な捜索や、長期化したケースの広域調査をお受けしています。緊急のご相談は24時間365日受け付けています。
よくある質問
警察に届け出るのは、何時間くらい経ってからがよいですか。
待つ必要はありません。認知症の方の場合、いなくなったと気づいた時点で通報してください。特異行方不明者として扱われるため、早期の通報が捜索体制に直結します。
届け出た後、こちらでも探してよいのですか。
問題ありませんし、そうしてください。ただし、自宅に待機する人を必ず残し、探す範囲と担当を家族間で共有してください。無計画に全員が動くと、かえって連絡が取れなくなります。
見守りGPSの費用に助成はありますか。
多くの自治体で、端末の購入費や月額利用料の一部を助成する制度があります。制度の有無と内容は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の高齢福祉担当課、または地域包括支援センターにお問い合わせください。
遠方で保護されていた場合、どうやって連絡が来ますか。
警察に届出が出ていれば、保護された先の警察署から照会がかかり、届出人に連絡が入ります。身元がわからない状態で保護されているケースもあるため、届出時に身体的特徴(傷跡、手術痕など)を詳しく伝えておくことが重要です。
探偵に依頼した場合、警察との併用はできますか。
できます。むしろ併用が前提です。当社は警察の捜査に干渉することはなく、聞き込みや防犯カメラの確認など、民間で可能な範囲の調査を並行して行います。得られた情報は警察にも共有していただいて構いません。